Post Script 1-Felia
「フェリアちゃん、いるの?」
あたしはベッドの上で呼びかけた。
フェリアが、4つ足で歩いて来て、あたしの顔を見ると「あうん♪」と可愛い声で
鳴いた。
そして、ベッドに上がってくる。
あたしの裸の胸に、目をつぶって顔を摺り寄せる。
おっきな乳房の感触が好きらしい。
本当はあたしも好き。でも自分のに、すりすり出来ないけどね。
フェリアは、あたしの乳首をぺろぺろと舐め始める。
別に、彼女は母乳が欲しい訳じゃない。
「あん...あ...」
あたしは、軽く喘ぐ。
ライラが毎日のように色々してくれたから、あたし、とても敏感になってしまった。
ずいぶん、ライラに身体を開発されちゃったなあ。
フェリアは、にこにこしながら、熱心にあたしの乳房を舐め回す。
あたしが、それが気持ち良いと言う事を、彼女は覚えたから。
この娘の体からは、奴隷にされていた時のような酷い装飾は、もう外されている。
手足の切断面のカバーも、重い金属製から軽いプラスチックに変えられた。
ガルティの娘というのは、この少女にとって幾重にも重なる不幸の根元だった。
信じていたはずの、たった一人の肉親の手引きで身体を改造され、弄ばれた。
事件が解決した時、彼女の治療を積極的にしようという者が現れなかった。
立候補した人物に預けられたが、その人物は組織に娘を2人とも改造・売却され、
当の昔に死亡が確認されていた両親だった。
復讐の為に引き取ったのが判り、急遽取り戻された時には、既に手後れだった。
少女は、本来心を癒されねばならない時に、責められ、苛め抜かれ、身体は弱り、
精神的にも、とり返しがつかない状態に退行してしまった。
あたしがそれを知ったのは、ライラのパパの話からだった。
ライラのパパは、忙しい仕事をぬって、あたしをよく見舞いに来てくれる。
彼にとっては、あたしが元の身体に戻らない以上、ずっと怪我人なのだ。
あたしはライラに懇願した。その少女、フェリアを助けて、と。
ある意味で、あたしと同じ目に遭った少女を、他人事と思えなかったし。
ライラには、理屈は分かっても、フェリアにあまり暖かい感情は持てない。
でも、それでもあたしの願いを聞き届け、ここに引き取ってくれた。
もちろん、はっきり冷たく当たりはしない。
そこまで彼女が愚かなら、あたしは好きにならなかった。
フェリアは、随分おびえていた。最初は、まったくの動物のようだった。
そういう風に扱われてしまったのだ。そして、毎日虐待されていたのだ。
虐待した人達は、自分の娘にされたことをやり返したつもりだろうけど、結果として、
自分まで犯人と同じ人種になってしまったのに、後から気がつく羽目になった。
でもそれではもう遅い。フェリアは、もう完全には回復できない。
フェリアは脅えた目で、部屋の隅に隠れる。最低限の食事だけはしてくれるけど。
だから、あたしの部屋で世話してもらった。あたしはフェリアに危害を加えられない
から、彼女も警戒を解きやすいだろうと思って。
ライラは賛成ではなかったようだけど、折れた。
フェリアは、比較的早く、あたしに対しての警戒を緩めた。獣のふりをしても、
本当の獣じゃないから、あたしが自分では動けない事はすぐ判ったようだ。
ライラや他の人が、あたしの世話をしている時は、フェリアはあたしのベッドの下に
隠れる。
そして、あたししか居ない時は、安心したように部屋をうろつく。
「そんなに心配しなくて良いのよ」
びく。フェリアがこっちを見る。
「ここに居る人は、あなたを苛めたりしないわ」
まだ見ている。
「仲良くしましょ?手足を奪われた者同士だものね」
その後、しばらく、あたしをじっと見ていた。
毎日、声をかける。
だんだん距離が縮む。
ある日、ベッドに這い上がってきた。
フェリアがあたしに危害を加えようと思ったら簡単だ。でも。
「頭、撫でてあげたいの。来て」
フェリアはあたしをじっと見てる。そして、あたしの顔ぎりぎりに近づいた。
あたしは、顔をフェリアの頭に近い部分に擦り付けた。
「つらかったよね?でも、ここでは安心して良いのよ」
ここが安全なのは、本当はあたしの手柄じゃないけどね。
その日の夜、フェリアは添い寝してくれた。人の体は暖かかった。
フェリアはあたしに一番早くなついてくれた。
やがて、他の人が部屋に居ても、逃げなくなり、そして、あたしの前でなら
体を拭かれたり、とかの世話を、じっと受けるようになった。
ライラが、再び頻繁にあたしの世話が出来るようになり、ほっとしたように言った。
「あなたを見てると、あの子がガルティの娘だって事、つい忘れちゃうわ」
「あたしは、ひょっとしたら馬鹿なのかもしれないわね?」
「.....ううん、きっとあなたが正しいのよ」
フェリアが無邪気に笑いかけてくれるようになり、人間全般に警戒を抱かなく
なり始め、やがてライラも随分軟化した。
いま、フェリアはとりあえずペット扱いされてる。もちろん首輪を付けて犬小屋に
入れてるとか、そういう意味じゃない。食事はテーブルで食べさせるし、トイレも
風呂も人間としての設備を使わせてる。
ただ、彼女は四つん這いを好み、動物のように振る舞うのを好み、言葉を使わない。
自分を人間だと思いたくないらしい。気持ちは分かる。
強引にリハビリしても、フェリアが今の状態で満足している限り、回復は無理だろう。
フェリアが熱心にあたしのあそこを舐めたり、吸ったりしている。
おしっこをして、という合図だ。
「ちょっと待ってね、フェリアちゃん」
あたしは、ちょっと力む。.....じわっ......あ...出てきた。
フェリアがそれを、こくこく...と飲む。一滴もこぼさない。
舌と唇で、液体を受け止めながら吸い込む。
これは、すごく気持ちいい。癖になりそうなほど。....もう、なってるかな?
「はぁ..あ....ん...ん」
全部出しちゃった。フェリアはその最後の一滴まで飲んでしまった。
そして、「あふうん」と可愛く鳴く。その口でキスをせがむのは、ちょっと困るけど。
うん。判ってる。この娘はあたしの世話をしたいんだ。
ライラがやってるみたいに。
ライラだって、あたしを、それこそ舐めるように世話をする。結構、比喩じゃなしに。
この娘を一番可愛がってるのがあたしという事を、この娘も感じてるらしい。
物理的にはあたしはこの娘に、ほとんど何もしてあげられないけど。
でも、そんなことはこの娘にはどうでもいいのだ。
それが、何故だかあたしには嬉しい。
「あ、ここに来てたのね」ライラがやってきた。
「この娘、まりあが本当に好きなのね....」
そう言って、フェリアの喉を撫でる。
フェリアが、気持ち良さそうに目を閉じる。
「ライラにも、だいぶなついたわね」
「まだそれ程じゃないの。あたしが気持ちいいことしたげるの、知ってるだけから。
まりあには無条件なのよ、この娘」
「ライラもだいぶその娘に優しくなったじゃない」
「だってね....まりあのお気に入りなんだし」
ライラは、あたしを愛しげに見ながら続けた。
「あたしと同じで、まりあが大好きなんだし、ね」
ライラに抱かれたフェリアが、同意するように鳴いた。
フェリア、いつか一緒にお散歩に行こうね。
今でも、ライラがあたしを時々つれていってくれてるけど、それと一緒にね。
フェリアちゃんは、手足を作ってもらった方が良いかな?
その時は、2本足で歩くことを思い出さないとね。
それとも、今みたいに歩きたいの?
.....まあ、それはそれで、いいか。
Post Script 1-Felia END