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ACTION-7

あたしは、弾みを付けると、床をごろごろと回って、パイプの山に近づく。
そして....手ごろな長さのパイプを2本選んだ。

体全体を使って、パイプを部屋の壁に垂直に寝かせる。
そして、背中のばねを使うと、太股の断面をパイプに叩き付けた。

「......!」
激痛。そして、鋼鉄のパイプは、あたしの太股の切断面に深々と刺さった。
もう1本。

「う......!」ちょっと声が漏れた。でも、突き刺し成功。

もう2本選ぶ。
腕はろくに残ってない。攻撃力と考えるなら、前向きに腕は欲しい。
と言う事は。最初から前に有ればいい。

パイプに、肩の前側にを、思いっきり叩き付ける。

ぐしゅうぅ!
骨を削りながら、パイプがあたしの肩に刺さる。
....痛みで混乱してきた。
でも。

ぐしゃ!4本目!
できた....できた....はあはあはあ....
あたしの仮の手足。長さしか無い、単なる棒だけど。
強度だけはあるわよ。だって鋼鉄だもん。

肩のパイプを正面の壁に押し当てて、一気に突く。
肩の肉にパイプが更にめりこむ。
反動で体が浮く。
懸命にバランスを取りながら、続けて床を突く。
背中を丸めてから反らし、反動で体をもう少し浮かせた。
何とか体を垂直に保つ。

あたしの体重がすべてかかり、パイプがめりめりと太股に食い込んで行く。
痛い....歯を食いしばるけど、痛みは無くなる訳はない。
でも、意識はさっきまでより随分はっきりしてきた。

あたしは、パイプの上に乗っかるように、立っていた。
食い込むパイプは容赦なく痛みを与えつづける。
血が、冗談で済まない位、そこから垂れ始めた。

歩ける?

太股を動かす。かつ。かつかつかつ...かつん。

バランスを崩しながら、跳ねるように動く。まるで竹馬みたい。
動くたびに食い込み、新たに痛みが起きるが、そんなのは最初から判ってる。

長時間は持たない。この出血では、じき意識が無くなる。死ぬかもしれない。
それに、パイプがどんどん食い込んでしまえば、貫通するか、内臓に達する。

でも。正義の味方がそんな事に臆しちゃいけないの。
これは、最終回なの。
最後に、正義の味方はヒロインを助けるの。
そして、死ぬ。これから始まるのは、死ぬ前の大活躍。
死ぬ前だから、少々傷ついてもいいの。直らなくていいんだから。
ヒロインを助けるまで、持ちこたえさえすれば。

あたしが自己陶酔してるのは認める。だって...そんな精神状態にでもならないと
この激痛では動けない。この際、自己暗示の1つや2つ、かけておかないと。

本当は、ライラ以外にも酷い目に遭ってる娘は一杯いるの。それはわかってるけど、
あたしにも余裕ないから、この際単純化して考えさせてもらう。

ライラを助け、ここから脱出させる!
いくよ!
正義の味方、最後のお仕事!
かつかつ!かつかつ!かつ!......結構疲れる....

ライラはこっちに連れて行かれた.....
で、どこが出口?
ああもう、わかんない!

半開きの部屋を見つけた。よし、これ!
ドアを突き、開ける。

あら。大当たり。

ライラを5人の男が責めていた。
「....あ?...おい?....」
あたしは相当不気味な姿だったろう。
2人の男が唖然とした顔で、あたしに近づく。
「誰だ、こんな気持ちわるい細工したの?」

あたしは前に体重移動しながら、肩のパイプを、2人の男の喉に突き込んだ。
「けふっ」
男達が跳ね飛ばされて、倒れる。
「な。なに?」
勢いで残り3人に向かう。

まだ残りの男達は呆然としていた。
そのまま一人の鼻を叩き潰し、もう一人の喉を潰し、更に残りの男の丸出しの股間を
パイプ先端で直撃。
そこでなんとかあたしは倒れずに止まった。
5人の男達は、白目を剥いて気絶するか、苦痛で体を丸めて悶絶している。

悠長に格闘する余裕はない。
足代わりのパイプは、前後横にいいとこ20度しか動かない。
手代わりのパイプは、肩の動き分の左右振りと、突きしかできない。
それ以上は体全体で振り回すしかない。
急所に一撃で入れ、昏倒させるか行動不能にしないと、それ以上長引いたら負ける。
幸い、それが出来る急所は良く知ってる。
あ、なるほど、格闘で学んできた事、この体でも、まるっきり無駄じゃないわね。

「ライラ、大丈夫?」
「????」
状況を把握するのに数秒を要したようだ。
「ま...まりあ?」
「言ったでしょ、正義の味方は勝つって。さ、急いで逃げましょ!」

あたしが動けるうちに。あたしの命がもつうちに。

ACTION-7 CLEAR



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