「僕は南の島で愛する君と再会した。」
白の1/黒の1/白の2/黒の2/白の3/黒の3/白黒の4/黒白の5/白の6・黒の6
<白の1>
まぶしい太陽、青い空、白い砂浜、透き通った海。
これだけの材料が揃っていて、最悪な気分になるなんて、どんな時だろう。
難しい事じゃない。その気がなければ何だって最悪だ。
「うっ・・・?」
僕は頭を振りながら、腕をつき、上半身を起こす。
うつぶせだった背中側は、焼けるように熱くて乾いている。
でも胸側は、服も、僕の下になっていた砂も湿ってた。
「ううっ・・・」
波打ち際で、僕はしばらく四つんばいのまま唸っていた。
頭が痛い。どこかにぶつけたんだろうか。
「はぁ・・・」
ごろん、と今度はしりもちをつく。
輝く太陽の下で、コントラストの強い光景が視界内に広がる。
美しい海岸。どこのリゾート地だよ、ここは。
ざざー・・・・
波の音だ。
ずっと鳴っているので慣れてしまうが、意識すると聞こえてくる。
だるい。疲れた。熱い。そして頭が痛い。
気分は最悪だった。
とりあえず日陰に入った方がいい。日射病になりそうだ。
僕は立ちあがったが、何だか足元がしゃんとしない。
よほど疲れているんだろう。
とてもじゃないが、泳ぐ様な気分じゃない。
だいたい水着じゃないし、ここには別に泳ぐために来たわけじゃ・・・
ここには何しに来たんだっけ?
あれ? ここは・・・どこだ?
僕は、何でこんな所にいるんだ?
ちょっと待て、僕はどうしてあんな所で倒れてたんだ?
波打ち際から離れると、葉の大きなシダ科の植物が群生していた。
その下に座りこむ。へたり込んだと言った方がいいかもしれない。
ここはどこだ? 僕は何故ここにいる?
すぐには何も思い浮かばない。
焦るな。それじゃ、最後に覚えているのは何だ?
僕は頭を両手で抱え、思考を集中しようとした。
「い、いてて」
確実に頭を何かでぶつけている。でかいこぶがあった。
少し怪我もしているが、血はもう出てない。
えーと・・・最後に覚えているのは・・・
水中でもがいてる僕だ・・・船・・・そう、船から落ちたんだ。
でも水に落ちた時の記憶はごちゃごちゃだし、その後についてはもう判らない。
落ちる前には何があった?
誰かの顔を覚えてる。これは・・・羽村?
そう、羽村だ。高校の同級生。
羽村も船に乗ってた? ああ、乗ってたような気がする。
でも、なんで一緒に船なんか乗ってんだ?
羽村と船に乗るような事って、何かあったっけ?
ああ、あった。しかもでかいイベントでだ。
修学旅行だよ。羽村は同級生で、しかも同じ班だった。
途中で大きな船に乗る予定があったはずだ。いや違う、実際に乗ったんだ。
もちろん同じ班の羽村も一緒だ。
じゃあ・・・あの船が遭難したのか?
どこでだ? 何があった?
羽村はどうなったんだ? 他のみんなは?
だめだ、その辺の記憶は混乱してる。何があったかなんてカケラも出てこない。
まて、それなら何を思い出せる?
僕の名前は・・・これは簡単だ、飯山玲二だよ。
生年月日、出身地、両親の名前・・・大丈夫、全部判る。
さすがに小学校とか中学校で起きた事を一々覚えちゃいないけど、そりゃしょうがないだろ?
そして羽村とは、高校で知り合った。当然、修学旅行は高校2年で行った奴だ。
よしよし、順調だ。
じゃあ・・・修学旅行で何があったんだ?
・・・・・だめだ。
思い出せるのは羽村の顔と、あとは猫の耳や尻尾が妙に頭の中をちょろちょろする。
なんで猫なんだ?
たしか修学旅行に行くちょっと前に、猫を飼い始めた。それかな?
まだほんの子猫で、すごく可愛くてね。
でも旅行じゃしょうがないから、家族に任せてきたけど。
まあこの際、それは置いといて。
・・・うーん、肝心の旅行の中身について、ほとんど思い出せない。
何がどういう経過で、僕はこんな海岸にいるんだろう。
自分の服を探って見る。何か状況が判る物を持っていないか?
ラフなシャツにスボン。ポケットに何も所持品はない。海で流されちゃったんだろうか。
靴もない。靴下だけだ。こんなんじゃ何も判らないな。
「まいったなぁ・・・」
つぶやいた自分の声が、思ったよりしゃがれてて、僕は何度か咳き込む。
海水、かなり飲んじゃったんだろうな。
まあいい。とりあえず身体や記憶はそのうち、どうにかなるかもしれない。
それより、もし自分が遭難したんだとしたら、もっと切実な問題がある。
どうやって生き延びればいいんだ?
最悪の場合、全て自力でどうにかするしかない。
まず、現状を把握する必要がある。
僕は立ちあがると、とりあえず移動を始めた。
他の場所がどうなってて、何があるかを知っておく必要がある。
案外すぐ近くに民家があったり、道路が走ってたりするかもしれないじゃないか。
「・・・っと」
身体が弱っているようで、またふらつく。注意して歩かなきゃな。
服がすっかり乾き、靴下に穴があいて、それから更に歩いて・・・
僕はこの島の周囲を、あらかた回り終わった。
そう、これは小さな島なんだ。途中で高台に上がった時判った。
民家も道路も何もない。
これはますます、記憶がどうこう以前に、どうやって生きていくかを考えなくちゃ。
そして僕は、突然人工物を見つけた。
入り江が一箇所削ってあって、先の曲がった金属の柱がその先に打ちこんである。
漠然と、港だと思った。だって小型の船を停泊させるのに丁度いい感じなんだ。
船はなかったけどね。
金属柱にはこすれた跡がある。多分船を繋ぎとめた跡で、かなり新しい。
だからここは、完全に文明から隔絶した場所じゃない。
どうにかして、しばらく生き延びれば、きっと助かる。
ただ、そのしばらくってのがどれだけか判らないけど。
そして、どうやって生き延びるかってのも未知数なんだけど。
でもまあ、こんな大きさの島に、大型の肉食獣なんかいないはずだ。
だから、とりあえず水と食べ物の確保が最重要課題だな。
がさっ。
「い!?」
後ろの茂みが音を立てた。
風で鳴ったとかいうんじゃなくて、確実に中で何かが動いた音だ。
大型の生き物はいないはずでも、文明と接触があるって事は、逆に何かが持ち込まれている可能性もある。
僕は、おそるおそる茂みの方を伺う。
場合によっては海に飛び込んで逃げるつもりだった。
そうすりゃ、少しは時間が稼げるんじゃないだろか?
「うにゃ?」
茂みの中から、可愛い女の子がこっちを見た。
高校生くらいかな、それとももうちょっと下か。
いや、そんな事はどうでもいい。
人がいたのか!?
「うにゃうん♪」
女の子が、予想より遥かに低い位置から、茂みを飛び出してくる。
そして僕は一瞬、自分の見ているものを理解できなかった。
女の子は、ごく自然に四つんばいで走ってきたのだ。
その身体の位置がおかしい。
なんで腰がその低さになる? 足の分の高さはどこに?
「にゃう」
女の子は呆然としていた僕の足元にたどりつくと、顔を摺り寄せる。
その頭に生えている大きな獣の耳は何?
おしりから突き出す、毛のふさふさ生えた尻尾は?
どうしてこの娘は、服を着ていないんだ?
どうして・・・手足が無いんだ!?
違和感があるのも道理だ。
彼女の手足は、肘と膝のあたりまでしか見えない。
端っこあたりが、プラスチックで包まれている。
プラスチックは半透明なので、そこに何のトリックもないのが判る。
この少女の手足は、そこから先が無い。
僕は何を見ているんだ? これは・・・悪い夢か?
力が抜け、その場にしゃがみこんでしまった。
少女が無邪気な笑顔で僕を見ている。
「・・・羽村?」
僕は思わずつぶやく。
「にゃ?」
「羽村なのか・・・?」
その少女は、僕の知っている同級生に似ていた。
そう、さっきから僕が気にしている、一緒に修学旅行に行った羽村だよ。
最初から気づけと笑われそうだけど、しょうがないじゃないか。
印象が違いすぎる。
羽村には、こんな獣の耳など生えてなかったし、手足だって普通に付いてたんだから。
でも、本当に羽村なのか? それとも偶然良く似た他人が・・・
偶然だって?
彼女とは修学旅行で同じ班だから、ずっと同行してる。
なのに、ここにそれとは別に、そっくりの別人が現れる?
そんなバカな事があるか。
およそ信じられないけど、それじゃあこれ、やっぱり羽村なのか・・・?
「にゃうん」
少女が僕の顔を、ぺろぺろ舐める。
「お、おい、よせよ・・・なあ、お前羽村か?」
「うにゃ?」
「僕が判るか?」
少女は少し首をかしげ、問うように言った。
「・・・にー・・にゃま?」
「そうだよ、飯山だよ!」
「にーにゃま♪」
少女は嬉しそうに繰り返す。
羽村ってこんなに幼かったっけ?
僕の知っている羽村は、もう少し大人びた感じだ。
同じ笑うんでも、こんなにあけっぴろげで無邪気な笑顔なんか、見た事ない。
まるで別人だけど・・・でも顔は羽村なんだよな。
それに、彼女は僕を知ってる訳だろ?
だから・・・つまり・・・やっぱり・・・?
「やっぱり羽村なんだな・・・なんで・・・そんな姿に・・・」
「にゃふぅ」
少女は・・・いや、もう羽村と呼ぼう。羽村は僕の胸に顔を摺り寄せた。
まるっきり猫のような仕草だ。
そういえば頭の耳も、尻尾も猫みたいだ。
「・・・お前・・・何されちまったんだよ・・・?」
羽村に話しかけても、不思議そうな顔をされるだけで、まともな返答が帰ってこない。
猫みたいな声で鳴かれるだけだ。
ただ、それっぽい鳴き方をしてはいるけど、あくまで人間の声で口真似している感じだ。
だから、外見を変えられてはいても、中身はちゃんと人間なんだ。
いや、中身も多少変えられている様な気がするけど。
表情とかまるっきり子供だし、知能はそれ以下って感じだ。
まともに喋れないって事は、頭にも何かされてしまったんだろうか?
これじゃ、どうも本人に事情を確かめるのは難しそうだ。
僕はとりあえず、彼女の腕を手に取り、調べてみる。
肘関節の先くらいまでしか残ってない。プラスチックごしに、切断された跡が見える。
しがみつくように密着してくるので、足も調べてみた。
こっちは、関節よりだいぶ短い場所で切断されている。
そして手足の切断面を保護しているらしいプラスチックカバーには、すべり止めと思われるゴムが張りつけてあった。
つまり、四つんばいで動き回る事を想定されているって事だな。
まるっきり獣みたいに。
僕が気絶している間に、一体何があったんだ?
誰が彼女をこんな目に遭わせた?
羽村を・・・こんな・・・ひどい目に・・・
ああ・・・思い出した・・・
僕は、船の到着した街で、彼女に告白するつもりだったんだ。
なるべくロマンチックというか、ムードのありそうな所を調べて。
さりげなく連れ出して。
それが、なんで・・・こんな事に・・・。
手足を調べている間、彼女は抵抗するそぶりもなく、僕によりかかったままだった。
頭に付いている耳も、調べさせてもらう。
思ったとおり、やっぱり本物の耳じゃない。だって耳の穴が無かった。
人間の耳はちゃんと残っているので、こっちは単なる飾りなんだろう。
でも一応は生身で、ちゃんと頭の中から生えている。
どうも頭蓋骨まで細工がしてあるようだ。
引っ張ったくらいでは取れそうに無い。
ついでに、尻尾も調べる。
こっちはおしりの割れ目の上あたりから生えていて、尾てい骨に繋げてあるみたいだ。
たぶん、これも機能はなくて、ただの飾りなんだろう。
耳と同じで、まがい物を手術でくっつけてあるだけだ。
でも、それは充分ただ事じゃない。
なんせ手術だ。切ったり縫ったりしてるんだ。
糊でくっつけるのとは訳が違う。洒落じゃすまない。
でも考えてみれば、手足を無残に切り落とせる様な奴だ。
耳や尻尾を細工するくらい、何ほどの事でもないんだろう。
「にゃあうぅ・・・」
羽村が身体をくねらせ、おしりを突き上げる。
「え?」
丁度僕はそこを触ってた。もちろん背中側からで、変な事はしてない。
「にゃふぅ・・・うにゃん」
でも彼女は、潤んだ目で僕を見ながら、身体を押しつけてくる。
そ、そうか。
尻尾の付け根あたりって、つまりそういう場所だから、触られて変な気分になったのか?
さっきも言ったけど、彼女、全裸なんだ。
その状態で僕にしなだれけかってくるから、それが裸の女体だって事を、急に意識し始めた。
でもいくらなんでも、何者かに身体を改造されてしまった初恋の少女に迫られる、なんて状況で、その気になれるか!?
「まてよ、おい、羽村!?」
「にゃうん・・・」
羽村は僕のズボンの股間に、顔をすりすりとこすりつけた。
「ちょ、ちょっと! よせって」
「うにぃ・・・」
じいいいい。
彼女は口で、器用にズボンのファスナーを開けてしまった。
その気になれるか、と言うと、なれるらしい。
だって僕は、絶対に嫌だったら、それを止めさせられたと思う。
相手は手足がないんだし、力だってこっちの方が強い。
それなのに彼女がまんまと、僕のペニスをズボンの中から引っ張り出してしまったのは、結局僕が本気で抵抗しなかったって事なんだろうな。
羽村は嬉しそうに僕のペニスを銜えて、しゃぶる。
「羽村、だめだよ・・・こんな・・・事・・・!」
「にゅむ・・・ん・・・にゅう」
彼女はくぐもった声を漏らし、口を動かす。
僕はただ、彼女の頭を抱えるだけだ。
血とか、他にも何だか色々なものが下腹部に集まるような気がする。
「ああ・・・羽村・・・だめだっ・・・」
もう、今にも出してしまいそうだ。
何でこんな事になったんだ。僕はまだ羽村とデートもしてなかったのに。
こんな事して欲しいな、なんてズボン膨らませながら想像逞しくしたけどさ。
それに妄想の中でなら、もう何度もこういう関係になったけど。
もっと大人になった羽村に、あれやこれやしたけど・・・でもこれは現実だ。
「うぐ・・・・」
僕は、羽村の口の中に思いっきり射精した。
「んふぅ・・・んふ、んふ」
ごくん。
羽村は口を放さず、そのまま僕の精液を飲み込んでしまう。
僕は呆けた顔で、羽村の頭を撫でるだけだ。
やっちゃったよ・・・羽村に銜えさせて、挙句の果てに飲ませちまった。
これでもう、普通には戻れない。無かった事には出来ないんだ。
でも・・・待てよ、今はもっと大きな問題があるだろ?
羽村をこんな身体にしちまったのは誰だ?
やっちゃった責任から逃れる為にこんな事を言ってるんじゃないぞ。
僕がここに流れ着いたのは偶然かもしれないけど、羽村は確実に誰かの手でこんな目に遭わされたんだ。
そいつはどこにいる?
まさか・・・どこかから見てるのか?
ちゅぷ・・・ちゅぷ・・・
「にゅふう・・・んにゅ」
羽村が僕のペニスをしゃぶり続けるうちに、また固くなってきた。
でもそれどころじゃない。
僕は立ち上がろうとした。
でも、羽村は僕のペニスを銜えたままだ。
「ちょっと離れて」
彼女の顔を両手で押さえ、僕はペニスを抜き取る。
「にゃう?」
「今はだめだ。ここから離れるんだ、羽村」
もう手遅れかもしれないけど、どこかから見るためなら、ここは絶好の場所だ。
海からも丘からも丸見えだから。
茂みの中に入ると、何故か羽村が先に立って歩き始める。
もちろん四つんばいで、あの切断された手足でだ。
尻尾はそれなりの強度があるのか、だらんと垂れ下がらず、多少宙に浮いた位置でゆれている。
その付け根のちょっと下に・・・羽村の性器が丸見えだった。
さっき中途半端な所で舐めるのをやめさせたペニスが、ずくん、と脈打つ。
でも、さかってる場合じゃない。あそこに居たら、羽村にあんな事をした奴がいつ来るか。
いずれ対峙しなければならない相手かもしれないが、こっちは何の準備もできていない。
羽村はちらっと僕を振り返る。
「にーにゃま?」
「ああ、ちゃんと居るよ」
「うにゃ」
「なあ、どこに行くんだい?」
「にゃうにゃう」
答えてるのか適当に鳴いてるのかわからないけど、とにかく羽村についていく。
彼女は何かの確信があるのか、まったく躊躇無く歩いていく。
速度は遅かったけど、それは今の羽村の身体の構造から言って、仕方が無い。
だって四つんばいになって、膝で歩いてみろよ、すぐ判るから。
まあ、こっちもあまり早く歩ける体調じゃないから、かえって助かる。
「うにゃあ」
羽村が立ち止まり、一声鳴いた。
「これは・・・?」
さっきの場所から歩いて10分くらい。。
10メートルくらいの落差の丘の下に、日の当たる小さな広場がある。
丘からは小さな滝が流れ落ちていた。
滝といっても、水道のホースから流す程度の小規模な水量で、丘の上ではなく、側面の小さな穴から噴き出している。
ふと気が付くと、羽村は滝の下で、気持ちよさそうに水を浴びていた。
時々上を向いて、水を飲み込んでいる。
僕もかなり喉が渇いていた。
まあ羽村が飲んでるなら、水質は大丈夫なんだろう。
滝の下で、手で水を受け取ってから飲んだ。
うまい・・・身体が求めていたからだろう。少なくとも変な味はしない。
続いて羽村は、近くに生えていた背の低い木にくっついていた黄色っぽい実に、直接かじり付いた。
手で押さえながら噛み付き、食べていく。
僕もその実を1つもぎ取り、食べてみた。
淡白な味で、少し甘い。とてもおいしいって物でもないが、充分腹は充たせる。
周囲には少し色や形の違った実を持った木が、いくつも見える。
何となく判った。ここは餌場だ。
飲める水質の滝に、えらく都合の良い場所に生えている、食べられる実を付ける木。
羽村をこんな風に改造してしまった奴は、彼女を飼い続ける為に、人為的にこんな環境を作ったんだろう。
この島は羽村の飼育場なんだ。
僕はどうすればいい?
羽村を助け出したいけど、そのための手段を何も持っていない。
それ以前に、どうやって生きていくか、それすら怪しい。
そして僕の存在を、奴ら・・・正体不明だけど、とりあえず奴らって事にする・・・奴らは知っているのか?
「うにゃ?」
座りこんでると、羽村がまた僕にすり寄ってきた。
そして、突然くるっと向こうを向く。
「わっ」
目の前に羽村のおしりが、どん、と突き出された。
尻尾が僕の頭を撫でる。
「うわ・・・」
僕は、思わずおしりを両手で掴んでしまった。
丸見えの羽村の性器を、思わずじっと見つめてしまう。
うっすら毛が生えた、真ん中に食い込んだような亀裂の入った、柔らかそうなふくらみ。
その亀裂の中に、桜色が覗き見える。
「にゃうん・・・」
羽村が僕に、おしりを振るように押し付けてくる。
好きな娘のあそこが、目の前にあるんだよ?
しかもさっき、半端なところでやめてて、まだもやもやが残ってる状態なんだ。
とてもじゃないけど、もう我慢できない。
それに、いまさら格好つけても始まらないんだ。
もうペニスを銜えさせて、精液まできっちり飲ませちまったんだから。
羽村の性器に指をあて、ぷに、とふくらみの片方を引っ張る。
羽村の中身が見えた。桜色の粘膜の隙間に、奥まで続く穴が覗く。
僕はそこをもっと広げ、中を探る。柔らかくて暖かい。
「にゃふ・・・・にゃ、にゃう」
僕の指で敏感な所をいじくられ、羽村が喘ぐ。
でも逃げる気配は無い。
上半身を伏せ気味にして、おしりだけ突き上げた姿勢になる。
羽村はまだ、処女なんだろうか。
でも、奴らがまだ手を出してないなんて思えない。
だいたい、こんな行動をしてくるって事は、もう色々仕込まれてるんじゃないか?
それを考えると腹が立つけど、それ以上に僕はもう我慢できない。
もどかしくファスナーを下げ、ズボンの中から自分のペニスを取り出す。
そして膝立ちすると、突き出された羽村のそこにあてがい、一気に押し込んだ。
「ふぎゃうっ・・・・ふに・・・にゃああう・・・」
羽村は苦しそうにのけぞり、ぶるぶる震える。
もう止まらない。そのまま力を緩めず腰を押し当てる。
羽村の中は狭く、やたら締め付けてくる。
ある程度差し込んだ所で、僕は腰を前後に動かし始める。
「にゃっ・・・・にゃっ・・・・」
僕の動きにあわせ、羽村が声を漏らす。気持ちいいのか苦しいのか、微妙な感じだ。
「ごめんな・・・羽村・・・」
「にゃうん・・・に、にーにゃまぁ・・・」
こんなややこしい状況なのに、なんだか至福感がある。
やっと、だ。
やっと羽村と繋る事が出来た。やっと彼女に手が届いた。
「羽村・・・やっと・・・やっとだよ・・・」
何がやっとなのか、自分でも良く判らないけど、僕はそうつぶやいていた。
ずっとこうしたかったんだ・・・ずいぶん前から・・・
さっき彼女の口に出したせいだろうか、意外に長持ちする。なかなか射精にまで至らない。
僕は羽村の後ろに覆いかぶさり、彼女の乳房を揉み始める。
「にゃあ、にゃ、にゃ、にゃああ」
羽村がそれに敏感に反応してくれる。
乳首をくりくりと押さえてみると、びくん、びくんと小刻みに震える。
強めに揉むと、ぎゅっと締め付けられる。
すごくいい感じだ。
そのまま羽村を後ろに引っ張り起こし、座った僕の前に乗っける。
ペニスに羽村の身体がのっかり、体重がかかって一段と深くそこを貫いていく。
更に下から突き上げてやる。
「に、にいにゃま・・・にゃ・・・にゃあっ」
一番深くまで貫かれ、羽村が小さくもがく。
繋がったまま、彼女の身体をゆっくり回し、こっちに向かせていく。
締め付ける膣の中を、ペニスが抉りながら強引に回転していく。
「にゃうぅ・・・にゃ、にゃ」
ずりゅ、と粘膜が大きくこすれあうたびに、羽村が声を上げる。
そして僕らは、互いに向かい合う体位になった。
そのまま僕は、また前に倒れこみ、羽村にのしかかる。
彼女の身体、胸の膨らみ、紅潮した顔を見下ろす。
「羽村・・・すごくきれいだ・・・」
僕はささやきながら、また腰を引いては突き込む。
「にゃ、はにゃう・・・にゃ、にゃ、にゃっ」
身体のぶつかり合う音に、ぐちゅ、ぐちゅっと湿っぽい物が混じる。
さすがに、もう出そうだ。
「羽村の中に出すよ・・・いいかい・・・?」
「にいにゃ・・ま・・・」
拒絶の気配は無い。だけど今の羽村に、膣内射精が意味する物が判るんだろうか?
本当に出していいんだろか?
いや・・・いい。僕だって覚悟はある。
「にいにゃ・・ま・・にゃ、にゃうっ」
そして僕は、熱い精液を羽村の中に注ぎ込む。
子宮にまで届けとばかりの勢いで。
射精した後、しばらく羽村の上でゆっくりと身体を動かす。
まだ、余韻を楽しんでいたかった。
なんだか、とんでもない成り行きになったけど、でも妙な満足感があった。
やっと・・・羽村とこういう関係になれたんだから。
僕は羽村と結ばれたかったんだから。
もし子供が出来ても、僕が責任を取る。
そうだとも・・・羽村、結婚しよう。
もしこの島から脱出できなくても、死ぬまでずっと面倒をみてやる。
いいんだ。こんな身体にされても羽村は可愛い。
独り占めしてしまいたくなるほど。
しばらくして、身体を離す。
羽村は途中までしかない手足を投げ出し、ぐったりと横たわっていた。
「・・・あれ」
羽村のそこを見てから、自分の股間を見る。
ズボンに血のしみが付いていた。羽村の股間からも、まだ血がにじんでいる。
「初めてだったのか!?」
「・・・にゃ?」
羽村がちょっとじたばたした後、身体を起こした。
手足の重量を錨に使えないので、仰向けに寝転がると立ち上がりにくいようだ。
「羽村、お前・・・まだ・・・初めてだったのか?」
「にゃふ」
羽村は僕のペニスを銜え、精液だの血だのの汚れを舐め取っていく。
自分の股間ににじむ血はおかまいなしだ。
「まだ手を出してなかったのか・・・奴ら」
何故だ?
ここまでやっておいて、どうして肝心な点だけを放置する?
いや、待てよ。
別に羽村を陵辱するのが目的なら、耳や尻尾をつけたり、手足を切断する必要はないんだ。
そういうのは、目的がなきゃやらない。逆に言えば目的があるからこそ、そんな真似をした。
身体を改造して、でも肝心な場所には手を付けない、という事は・・・・
そうか・・・羽村は商品なんだ。
色々仕込まれて、身体を改造されても、だから女としては未使用だったんだ。
奴らは売る為に羽村をここで飼育していて、そこへ事故で僕が割り込んだって事だろう。
確かに羽村は充分商品になる。奴らの見立ては正しい。
この変な改造も、彼女を醜くはしていない。
改造行為の残虐性を別にすると、獣みたいな身体にされてしまった羽村には、妙な可愛らしさがある。
もし僕が、元々の羽村をまったく知らないとして。
今の状態の彼女が、密かにどこか怪しい市場で売られているのを偶然見つけてしまったら。
全財産はたいて、買ってしまうかもしれない。
可愛い少女を救う為にか、それとも自分の物にしたくてかは微妙だけど、とにかく放っておけない。
まあそれ以前に、はたくほど財産はないんだけど。
ペニスの掃除が終わり、羽村は僕を見上げ、にこっと笑った。
「にーにゃま♪」
僕は羽村の上半身を引き起こし、ぎゅっと抱きしめる。
彼女に謝るべきなのか、自分が彼女の最初の男になったのを喜ぶべきなのか?
「羽村・・・絶対助けてやるからな」
「にゃう?」
それに、見立てが正しかろうが、でも彼女の手足を切り取ってしまった奴らは許せない。
羽村は一人の人間だ。奴らの所有物じゃない。
そうだとも。絶対お前をここから助け出す。
もしこの島から出られなくても、奴らにお前を渡しゃしないからな。