お花のいっぱいさいている野原にあやこちゃんはねころんでいました。
お顔にはあせがいっぱいで、はあはあといきをしています。
おそろしいところから、にげてきたのです。
目のまえに、かわいいたんぽぽがさいています。あやこちゃんは、たんぽぽにいいました。

たんぽぽさん、こんにちは
こんにちは、あやこちゃん

あら、どうして、たんぽぽさんは、あたしのなまえをしってるの？
まあ、どうして、あやこちゃんは、わたしのなまえをしってるの？

どうしてかしら？
どうしてかしら？

そうね、あたし、たんぽぽさんがすきだから
えっ、わたしのことがすきなんですって？

ええ、とっても
わたし、こわい

どうしてこわいの？
だって、わたしたちをすきな人は、わたしたちをもぎとってしまうのよ

あたし、あなたをもぎとったりしないわ
どうして、しないっていえるの？

だって、あたし手がないから、もぎとったりできないもの
でも、足でふみつけたりしない？

だって、足もないから、ふみつけられないもの
どうして手も足もないの？

こわい人が、もぎとってしまったの
こわい人は、あやこちゃんがすきだったの？

わからない
あのね、わたし、あやこちゃんがすきだったから、たのんだわ

だれに？
ここをとおった人

なんてたのんだの？
あやこちゃんをもぎとってって

あたしを？
そして、もぎとったら、ここへもってきてって

ここにもってきたの？
ここにうめてもらったの

あたしの手と足が、ここにうまっているの？
とてもかわいらしい指輪がついていたわ

あたしの指輪よ
わたし、あやこちゃんがだいすきなの

あたしもたんぽぽさんがすきよ
でも、あやこちゃんは、わたしをもぎとったりできないわね

そうかしら
だって、手も足もないんだもの

でも、お口があるわ
お口では、もぎとれないわ

なんで？
お口は、おしゃべりをするものよ

お口でも、もぎとれるわ
お口でもぎとるのは、おぎょうぎわるいわ！

いいえ、あやこには手も足もないから、これから、お口がそのかわりよ
 あやこちゃんはお顔をそっとよせると、たんぽぽにかみつきました。

金色のはなびらがとびちって、あやこちゃんの肩とお尻にくっつきました。

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