大きな円筒水槽の中が、徐々に明るくなっていった。時刻は午後６時・・・・
この水槽の中ではこれから１日が始まるのでる。
それは水槽の中の生き物が見物者の『好奇心』と『欲求』を満たすためにそのように設定された時間である。
大きな円筒水槽の中が、徐々に明るくなっていった。
沙耶 「・・・・う・・・・う・・ん・・・・・・・・」
徐々に明るくなっていく光に照らし出され、そのまぶしさに沙耶は目を覚ました。
・・・・うう・・・・・・ま・・ぶ・・しい・・・・・・・・
沙耶は全身に倦怠感が残っていた。まだ麻酔がまだ完全には覚めきっていなかったのだ。
・・・・・・からだ・・・だるい・・・・・・
徐々にはっきりとしていく意識の中で、沙耶は周りの環境が普段の者と違うことに気づいていった。
・・・ここ・・・どこ？・・・なんか・・・背中・・・ちくちく・・・・する・・・
Ｓ「・・・あ・・・ぐ？・・・・あう・・・」
沙耶は口の中に何か入れられていることに気づいた
・・・なに？・・口の中に・・・パイプ？・・・
沙耶は口の中に入っている『くちばし』に手を伸ばしてつかもうとした。
しかし、指のない沙耶の手ではそのものをつかむことが出来なかった。
・・・？・・あれ？・・・・・
麻酔がまだ残っていて焦点の定まらない沙耶の目は、自分の手の異変を理解できるのには時間がかかった。
沙耶は手の指が痺れていて動きにくいのかと思っていたが、徐々に彼女の焦点が定まるにつれ、沙耶は信じられないものを
目にすることになった。・・
！！・・えっ！！こ・・これ・・・
・わ・・わたしの・・手・・なの！
・・・ゆ・・・ゆび・・・が・・・無い！！！
こ・・・こんな・・・・
Ｓ「あぐあううう・・・あがあ・・・」
沙耶は両手の指が全て根元から切り取られてることに着がついた。
そして自分が藁の上に裸で寝かされてることにも気がついた・・
・・・わた・・・し・・はだか・・・こんな・・・ひどい・・・
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかった。
沙耶は手の指に感じていた痺れた感覚が足にもあることに気付いた。
・・・ま・・さか・・・あ・・あし・・・・わたし・・の・・・・
沙耶は恐る恐る体を起こし自分の足を見た。
まだ少し焦点が定まらないその目に写った物は信じられないものであった。
沙耶の腰から下には足は跡形無くなくなっていた。そしてそこには鳥の脚のようなものがついていた。
・わ・・わたしの・・あ・・あし・・な・！
＜しゅううううううううううう・・・・・・・・＞
沙耶のデリケートな部分から暖かい黄色い水が弱弱しく流れ出た・・・
・・・だれか・・・・たすけて・・ママ・・・パパ・・・・だれか・・・たすけて・・・・
沙耶は力なく藁の中に倒れこんだ・・・
放心した沙耶は自分の体を写し出している物があることに気が付いた。
・・・あ・・あれ・が・・わたし・・の・・からだ・・なの・・・・・・・
その物は鏡が取り付けられた扉であった。
その鏡には、奇妙な格好で藁の敷かれた巣箱に横たわる沙耶が写し出されていた。
沙耶は体をねじり起こした。
Ｓ「・・うぐ・・・あうっ・・・・・」
脚の無い体は意外と軽く、沙耶は体を起こすことが出来た。
そして・・・・・・・沙耶は立ち上がった・・・
立ち上がった格好となった。
沙耶の足が切り取られたあとに取り付けられた鳥の脚のようなものは、沙耶の骨盤に直接つながっていて
沙耶の軽くなった上半身を安定良く支えていた。
沙耶は鏡に写った変わり果てた自分の体を呆然と見つめていた
・・・・・こ・・れ・・・わ・・たし・・・
くちばしを咥えさえられ短い足で立つ姿は・・・・
・・・・ま・・さか・・・・これ・・ペンギン？・なの？・・・
・・わ・・たし・・・ペンギン・・・なの？・・
沙耶の想像は正しかった。
沙耶はペンギンにされたのだった。
観賞用の『ペンギン』にされたのだった。
沙耶は いても立ってもいられなくなりなんとかここから逃げようと考えた。
・・・あの・は・し・・あの端まで行けば・・逃げれる・・
沙耶は体を前傾させ体の前に手をついた。
そして体の一部となった人工の鳥の脚を引きずりながら体を前に進めた。
Ｓ「・・・あうっ・・・うぐう・・・」
・・・・・うう・・・あと少し・・・・・・・
沙耶は尺取虫のように進ませて島の端迄やってきた。
・・・？！・・・・・・・
島の周りは水で囲われていた。そしてその外にはガラスの円筒状の壁が・・・
沙耶はおぼろげに分かってきた。・・・・・・・・
ここは水族館などにあるペンギン島と同じようなものだと・・・・
・・・・・い・・いや・・・いやよ・・・こんなの！！・・・いやああああああああ・・・
Ｓ「あうおあああああああ・・・・・」
沙耶の悲痛な叫び声が空しく水槽の中に響き渡った・・・・
・・・・わたし・・こんなところで・・みせものに・・・・・・・